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2014年12月31日

2014年を振り返る(道新)

12月26日(金)の北海道新聞の夕刊に、2014年の北海道の美術を振り返る記事が掲載されました。いつもお世話になっている道新の岩本さんからご連絡をいただき、5つの展覧会を上げさせていただきました。順番をつけるというのは、非常に難しいことでしたが、
展覧会の場を幅広く捉え、広い視野で企画をされている、また新しい試みを感じられる展覧会を上げさせてもらいました。

doshin
2014年 北海道新聞 夕刊

1.「子どものための美術展‐あなたのものがたり、わたしのものがたり」
2014.1.11-2.16
苫小牧市美術博物館
所蔵品、招待作家:藤沢レオ、徳田 幸次郎、河野 健

この展覧会は、とても印象に残った展覧会の一つでした。美術館などで、子どもを軸にした展覧会は開催されていますが、本展は、「作品を観る」という体験を様々なアプローチで子供も大人も楽しめる展覧会でした。★やハートがいっぱいといったしかけではなく、作品と向き合うためのしかけがありました。私も友人親子と一緒に観に行きましたが、スタッフの方たちの子どもたちへの声掛けも丁寧で、会期中に開催されたワークショップの内容にも感心させられました。子どもたちが創造する絵本の表紙を描くワークショップで、会場の出口付近にその作品たちが展示されていたのですが、その絵が本当に素晴らしく、今でも心に残っています。

 2.「松原 茂樹展 ルナール「博物誌」」
2014.9.1-10
黒い森美術館(北広島) 

私の個人的な感情もあり、感激をした展覧会でした。ジュール・ルナールの「博物誌」に描かれた動物たちが、松原さんの手によって、優しい表情で黒い森に現れた作品たちでした。松原さんの愛読書から生まれたこの展覧会の企画構成をお聞きし、私が大好きだった祖父を思い出しました。祖父は、ヘンリー・D・ソローの「森の生活」を愛読書にし、本の世界を木彫りの作品で再現し、生活を楽しんでいたからです。一つの本への思いから構成された展覧会の企画に、企画をする意味について考えさせられた展覧会でした。

3.「山本雄基 個展」
2014.9.2-9.14
ギャラリー門馬

2012年にドイツから帰国後、札幌で初めて開催された個展です。ドイツから帰国された後すぐにお会いした時は、特に変化を感じなかったとお話されていました。しかしながら、2年振りに作品を拝見したところ、大きな変化を感じました。ご本人にもう一度同じ質問をしたところ、作品の変化を実感されているようでした。円をモチーフに、画面構成がしっかり考えられ、その構成力があるからこそ、大きな作品が生まれ、魅了されるのではないかと思いました。絵のある空間はやはり良いものだなと、邸宅の装いのギャラリーで改めて感じた展覧会でした。

4.「木と紙の作品展 そして、夜がくる。」
2014.7.1-7.7
Context 21.8
阿部 寛文 × 辻 有希

グラフィックデザイナーの阿部さんと、木工作家の辻さんによる、昨年に続くシリーズの二人展です。古いアパートを改装したスペースには、Contextのオーナーの石神さんよるセンスの良いアンティークの什器があり、その空気と溶け込むように二人の作品が展示されていました。二人の作品と空間のどれが欠けても成立しない展覧会で、居心地の良い空間も含めて、他のどの場所でも実現できない企画展だと思いました。このシリーズ展は、引き続き開催されるそうなので、次はどんな試みをみせてくれるのか、とても楽しみです。

5.「鼓動する日本画 オルタナティブ」
2014.9.21-10.5
品品法邑
蒼野 甘夏、朝地 信介、上野 秀実、紅露 はるか、西谷 正士、平向 功一、水野 剛志、吉川 聡子

昨年のモエレ沼公園ガラスのピラミッドなど道内各地で展開されていた日本画展の続編です。“オルタナティブ”というテーマで、それぞれが平面の作品に加え、立体の作品にも挑戦されていた展覧会でした。特に、平向さんの画面から飛び出してきた物語性を感じる、立体の作品は圧巻でした。着色によって素材の風合いを表現しているその技術に、見惚れてしまいました。この展覧会の中心となって企画されている朝地さんは、「日本画の敷居を少しでも低くしたい」という思いで、日本画を描かれています。その思いや企画力に、いつも感心させられます。今後の展開も非常に楽しみです。

上記の5つの展覧会のほか、下記の展覧会も、印象に残っている展覧会です。

-「Sprouting Garden ‐萌ゆる森」2014.7.5-11/3 札幌芸術の森
-「杉山留美子展 [光の絵画へ] 杉山留美子作品の今後の保存と収蔵に向けての回顧展」2014.2.15-3.6 茶廊法邑・品品法邑

今年も残すところあと1日となりました。2014年も、二つの展覧会を札幌で開催することができ、多くの方にご来場いただきました。ご来場いただいた皆様、そしていつも応援してくださる友人、作家の皆様、本当にありがとうございます。多くの方々に支えられ、多くの方の力によって、展覧会を企画することができました。
来年は、二つの展覧会を開催する予定で、10回目の企画展を開催する節目の年となります。詳細は、来年のHP等でご案内していきたいと思いますので、また、作品を知る機会、観る機会を作っていきたいと思います。

来年も引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。
皆様、どうぞ良いお年をお迎えください!

withart 本間 真理