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Artist Interview

"見つめ続けた情景が線と重なる"

国松紗智子


北海道の白老町にある“飛生アートコミュニティー”で
大自然に囲まれて子育てをしながら活動する美術家の国松紗智子さん。
出産と育児を経験され、10月に“space Symbiosis”で開催する“CURRENT”で
3年ぶりに発表する新作、そして制作への想いをアトリエでお聞きしました。

更新日 / 2012.9.1


飛兎カフェでは、紗智子さんの心地良いドローイングが迎えてくれます。


初めて紗智子さんのドローイング作品に出合ったとき、風のように、すっと通り抜けていくような空気感を感じました。筆触やリズムによって表現するドローイングに魅力を感じましたが、ドローイングで表現する魅力は何でしょうか?

国松

大学1~2年生の頃は、木版画を制作していました。彫刻刀で描き出すカクカクッとした角張ったラインから、より直接的な「生っぽい」ラインを描きたいと思うようになり、周りからの薦めでシルクスクリーンに挑戦しました。シルクスクリーンも面白かったのですが、版の大きさが限られてしまうこともあり、もっと大きな作品を制作したい、もっと細いラインも描きたいと思うようになり、直接的な表現ができるドローイングという手法を選びました。

今年の2月にお会いしたときに「制作意欲が湧いてきている」とお聞きしました。「表現したい」というその心の欲求を知りたいと思い、展覧会への出展を依頼しました。子育てをしながらの忙しい生活のなかで、どんなタイミングで制作意欲が生まれたのでしょうか?

国松

授乳が終り、出産後初めて自分と向き合うことができました。娘が1歳になるまでは、心も身体も子育てに向かっていましたが、卒乳を機に、自身の欲求も考えられるようになり、自然に制作意欲が生まれました。

Artist Interview 国松紗智子
大自然に囲まれた飛生アートコミュニティーで、子育て&制作を楽しむ日々。

結婚、出産を経験され、以前とは制作する環境も大きく変化したと思いますが、その変化は制作に反映していると思いますか?

国松

環境は確かに変わりましたが、どんな所でも床に紙を置くスペースさえあれば、制作することができます。むしろ、変化のある環境で制作することにより、新しい作品を生み出すことができると思います。今は、子育てをしながら限られた時間の中で制作しているので、以前よりも制作へ向かう集中力が高まり、短時間に意識を集中させて制作しています。気持ちはのんびりしていますが、制作へ向かう意識の集中力が、一番変化したことだと思います。

紗智子さんが制作のテーマに掲げている「Line of Sight – 視線」について教えてください。

国松

「Line of Sight – 視線」というテーマは、2003年頃から掲げて制作しているテーマです。

日常の生活の中で目にしてきた様々なモノ、意識をしながらずっと見ていたはずなのに、その形は記憶に残っていないこともあり、後から思い返すこともできない。紙に向かってラインを描く時、その見つめ続けてきた情景の記憶の蓄積と線(ライン)が重なり、作品が生まれています。

10月の展覧会は、「CURRENT」というタイトルを掲げ、金属とガラスによる立体作品が創り出すラインと、紗智子さんが描くラインを交差させた展覧会にしたいと考えています。今制作されている作品について、教えてください。

国松

以前は、カーボン紙などを使って制作していましたが、今回はより直接的な表現をしたいと考えています。ポスターカラーや粉など新しい画材も使い、また紙だけではなく、木の板や厚みのあるキューブ型の木などにも描いてみようと思っています。新しい試みで空間を意識しながら楽しんで制作しています。

Artist Interview 国松紗智子
飛生アートコミュニティー

「飛生アートコミュニティー」では、今年で第4回目となる 「飛生芸術祭2012」を開催します。
国松紗智子さんは、木造校舎の教室で“飛兎カフェ”を運営する予定です。
この場所でしか味わうことのできない空気を、ぜひ体感しにお出かけください。

◎飛生芸術祭2012 僕らは同じ夢をみるー
2012年9月9日(日)~16日(日)
飛生アートコミュニティー(旧飛生小学校)
北海道白老郡白老町字竹浦520

*詳細は、以下のウェブサイトでご確認ください。
オフィシャルWEBサイト:http://fes.tobiu.com
お問い合わせ:contact@tobiu.co


2012年8月6日(月) 白老町にある「飛生アートコミュニティー」にて収録。

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