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"空中庭園"

2014年6月7日(土)17:00  MORIHICO Plantation
赤坂真一郎(建築家)×君島信博(盆栽作家)×渡邊希(漆作家)

更新日 / 2014.6.20


右から、渡邊希さん、君島信博さん、赤坂真一郎さん


「空中庭園」のテーマを考えるきっかけになったのは、渡邊さんの“skin”という作品でした。 この空間で“skin”を展示したいと思われた理由は、何でしょうか、作品のコンセプトも含めて教えていただけますか?

渡邊

以前から、“skin”を一日の中で雰囲気が変化する空間で展示をしたいと思っていました。 自然な見え方で、今まで入ったことがない空間に入るような感覚を体感できる展示を思い描いていました。
この空間に初めて訪れた時に、その思い描いていた展示を一瞬にしてイメージすることができ、いつかお話をいただけたらと思っていた矢先に、本間さんから企画の話があり、自分の思いを伝えました。
この作品は、「表層に様々なものが映り込んで見え方が変化する」というコンセプトで作っています。 漆というと「お椀」が一般的なイメージだと思います。漆を始めたときは、何百個のお椀に漆を塗る毎日で、漆にかぶれる体質を克服したいと思い、数をこなす毎日でした。 漆を塗っているときは生の状態でトロトロしていて、お椀の曲面を覗くと吸い込まれそうな感覚に陥ります。漆が乾くと塗膜のような境界線ができるため、その世界は、制作している自分にしか見ることができないと気づきました。 その吸い込まれるような感覚を基にこの作品の構想が生まれ、 乾漆という自由な形を作り上げることができる技術で、その思いを形にできたらと思い、大きな造形作品の制作を始めました。

渡邊さんの“skin”のコンセプトから、“skin”を池に見立て庭園を作り、その池の水面に映り込む自然物を、ぜひ君島さんに苔で表現していただきたいと思いました。 君島さんの今回の表現ですが、どんな思いで制作されましたか?

君島

今回の企画のお話をいただいたときに、自然の要素を加えるのが自分の役割だと感じました。普段は盆栽を作っていますが、この空間に盆栽を設置することにはならないなと直感し、苔を使った大きな作品になると考えていました。その後、赤坂さんの構成がはっきりしていく中で、板状の苔を作ることが見えてきました。当初は、板をすべて苔で覆う構想もありましたが、あまり苔らしさが出ないので、天板の上でより苔らしさを感じてもらうにはどうしたら良いか考えました。そこで、枯山水のように砂と苔で「間」を意識し、空気の流れのようなものを表現したいと考え、この作品が生まれました。

今回の構成は赤坂さんに依頼しましたが、「空中庭園」というテーマで、漆の作品を池に見立て、そこに映り込む苔の表現を配置することを条件に、考えていただきました。今回の空間構成についてご説明いただけますか?

赤坂

建築は、構成を考える時に自分でルールを作り、組み立てていくことが多いのですが、 この天板の大きさは、外との関係を考え、窓ガラスの大きさと同じです。また、天板を日本庭園にある石や池などのように、光を映しこむものとして捉え、すべて見立てで考えています。 天井から吊るしているお二人の作品については、窓を開けると少し揺らぎますが、雨や風、林や森を連想させるような配置にしようと考えました。 また、天板の高さを変え、起伏をつけて設置していますが、池(skin)の周りにこんもりとした地形を作り上げることを考え、そのようなルールを基準に構成しました。

今回は、全員で打ち合わせを重ね、一緒に作品や構成について考えていきました。君島さんから、今回の表現は赤坂さんの空間構成がなければ生まれなかった表現だとお話がありました。

君島

今回の展示は、白紙の状態から作り上げていく楽しさがありました。最初は、赤坂さんの言いなりになって作ろうと思っていたのですが、砂と苔で作る天板の試作品を作ったときは、完全に枯山水のようなもので、円弧を描く苔に、砂紋をつけたものでした。その写真を赤坂さんに見せた時に、「これだと枯山水そのものなので・・・」とお話がありました。
当初は、イメージとして枯山水のような見立てのイメージがあり、石を見て山を連想し、砂を見て水を連想する世界だったので、枯山水のイメージが強かったのですが、それをそのまま使うというのは違うと納得できました。
赤坂さんのスケッチが直線をモチーフにしたパターンだったので、そのスケッチを参考に作っていきました。
苔棒については、最後まで悩みました。最終的に、何てことのない苔棒を作りました。試作品は、もっと大きかったのですが、渡邊さんの漆の作品とのバランスが気になり、直前まで躍起になって作りました。 なかったものを、打ち合わせを重ねていく中で作っていく面白さがありましたし、意見を交換し合いながら、言い合える関係性の中で進めていくことができ、楽しかったです。

それぞれが思い描く庭について、教えてください。 渡邊さんは、「GARDEN」というタイトルの作品も手掛けられたとお聞きしましたが、渡邊さんが思い描く「庭」とは、どんなものでしょうか?

渡邊

幼い頃から広い庭が側にあったので、一日中庭で過ごし、隠れ家のような、秘密基地のような夢のある場所でした。自然な庭が好きで作品のテーマにしていたこともありますが、子どもが生まれてからは、また一日の大半を庭で過ごすようになり、落ち着く場所であり、親しみのある空間という対象に変化してきています。

君島さんは、庭を手がけるお仕事もされていて、今回の庭作りとはまた違う意識で手掛けられていると思いますが、君島さんにとって「庭」とはどういうものでしょうか?

君島

普段の庭作りの仕事は、お客さんの希望をどう叶えるかを意識して考えるので、自分が作りたい庭100%ではなく、自分ができる庭をお客様の希望のなかでベストを尽くし、作っています。そうすると、時々フラストレーションが溜まり、自分の作りたい庭を考える時があるんですが、今回の庭は特殊な空間での庭造りでしたが、自分が思う理想的な庭の断片がここにあると思います。
空想するのが好きなので、盆栽を作る時に全然違う景色を空想して遊んだりするんですが、具体的過ぎる庭は、目の前の景色がすべてになるので、このぐらいの少し分からないぐらいの庭のほうが、色々と空想することもでき遊ぶことができます。今回は自分の好きなことをさせてもらったなと感じています。

赤坂さんは、住宅を設計するうえで庭の空間を意識されると思いますが、赤坂さんにとっての「庭」とはどういうものでしょうか?

赤坂

今回の展覧会のテーマから、「庭」とは何だろうと考えていました。考えてみると不思議で、庭は一見自然のように思いますが、人が意図してものを配置し、育てているので、極めて人工的なものだと思います。自然のアイテムを使って人工的に庭は作られ、そこに奥深さがあり、面白いなと思います。 また、庭は、自然と人工をつなぐ境界のようなものではないかと思います。特に日本庭園は、人の考えや精神を表現していたり、物質と精神の間のようなこととも言えるだろうし、あの世とこの世をつなぐものでもあり、そういう場所として庭があるのではないかと思います。 枯山水のように、小さなものを見せて、そこにはない遠くのものを見せることにより、頭の中にイメージをさせる庭や、仏教建築などで使われている庭は、やはりあの世を表現していたりするんですね。
庭というものは、人に手入れされ、コントロールされた自然だと思いますが、特別な何かと何かをつなぐ媒体としての役割があるのではないかと思います。

赤坂さんは、以前から、建築家による建築以外の表現展を企画されていたり、また最近では、野外での展覧会にも作品を出品されていて、多くのアートイベントに関わられています。アートへの関心は深まってきているのでしょうか?

赤坂

アートへの関心はめちゃくちゃあります。ここ最近、作品を出品する機会が続いたのですが、特に関心が高まってきたというわけではなく、以前から関心がありました。元々、建築家になりたいと思っていたのではなく、アートの仕事をしたいと思っていました。ものを作るという意味では、建築と共通していると思います。

君島さんは、盆栽教室のほかにも、札幌にあるCAI02やギャラリー門馬ANNEXなどで、空間全体を使ったインスタレーションのような展覧会を開催されています。盆栽や苔を使って空間を意識した表現も追及されている理由は何でしょうか?

君島

趣味で盆栽を始めた頃から、盆栽そのものが好きでやっていたのではなく、木の周りに漂う雰囲気が好きでやっていました。初めて盆栽の展覧会を ギャラリーで開催したいときに、盆栽が持つ雰囲気が空間全域に広がる感覚を覚えました。一つの木で楽しむよりも、いくつかを並べることで雰囲気が生まれ、空気が充満していくのが面白いと思いました。そこで、この空間だったら、どんな雰囲気を作ることができるかを考えるようになり、時々空間を意識した展示をするようになりました。

企画をするうえでも、空間は非常に大切です。Plantationは、築50年という時が感じられる空間で、天井が高いことから、空中を意識した展示も可能です。また、他のギャラリーとは違って、三方向に窓があるので、照明だけではなく、光の変化によって表情を楽しむことができます。風が通り、日の光が入るので、今回のような自然物を扱うにも適した空間でもあります。
最後に、それぞれが思う空間の魅力について、教えていただけますか?

渡邊

この空間に初めて来たとき、今までにない空間に足を踏み入れたように思いました。下のカフェの空間とは全く違う空間を作りたいと思いました。何度も打ち合わせを重ね、ただ作品を持ってきて設置するのではなく、それぞれの仕事で空間を作り上げてきた、大きな意味のある展示でした。この空間に見合う、また違う世界を創ることができたのではないかと思います。

君島

古いものが好きなので、初めてこの空間を見た時から、大好きになりました。このような時間が堆積した空間は、ゆっくりと成長する苔と、時間が積み重なる感じが単純に似合うかなと感じました。 実は、初めて展示した空間も、森彦の1号店の離れにあったギャラリーでしたので、ご縁も感じました。

赤坂

ギャラリーやカフェとして作られた場所ではないところが、この建物の一番の魅力だと思います。この屋根裏は、いわゆる「がらんどう」で、この期間だけ庭園になり、また他の展示へと染まっていきます。ベットやキッチンなどを置けば住宅にもなり、他の住宅や小さな建物では、そのように変化することは難しいと思います。この広さと高さがあるからこそ可能なことであり、風も入り光も入る、その様々な要素がなければ、このような魅力的な「がらんどう」にはならないと思います。

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